地方公共団体の内部統制評価報告書の公表状況調査【東京都編その2】
・その2では、港区、文京区、台東区、墨田区、杉並区を取り上げる。
Ⅰ.港区
・正直、東京の中の区ごとの違いはあまりわからず、山の手とか下町とかのざっくりとしたくくりの方が、親しみがある。代表社員は港区には仕事で訪れたこともあると思うが、観光スポットが多く東京タワーや虎ノ門ヒルズなどの方が印象に残っている。
§東京タワー: https://www.tokyotower.co.jp/
§虎ノ門ヒルズ:https://www.toranomonhills.com/
・HPのトップ左上部は、スライドショーではないが「港区ニュース」、「マイナンバー」、「窓口状況」がクリックできるようになっていた。
§港区役所:https://www.city.minato.tokyo.jp/
・令和5年度の内部統制評価報告書の評価結果は以下の通りである。
5(2)評価結果
①港区内部統制制度の仕組みに対する評価結果
ア 全評価項目で評価は「不備なし」
ウ 重大な不備について 評価対象期間に発生した不適正な事務については、再発防止策を確認し、評価基準日において是正されていることから、重大な不備はなしとしている。
(筆者注:ガイドラインでは、評価対象期間中に運用上の重大な不備が把握された場合、内部統制は有効に運用されていないこととしている。港区の報告書では評価期間中に運用上の重大な不備が把握されたか否かについては記載がなく不明である。)
②各課の自己評価に対する評価結果
ア 各課の自己評価結果
内部統制の対象範囲 | リスクとして選定された件数 | 各課の自己評価 | |
財務に関する事務 | 136件 | 不備あり | 16件 |
不備なし | 120件 | ||
個人情報の取扱に関する事務 | 98件 | 不備あり | 21件 |
不備なし | 77件 |
エ 重大な不備について
評価対象期間に発生した不適正な事務については、再発防止策を確認し、評価基準日において是正されていることから、重大な不備はなしとしている。
§港区内部統制制度:https://www.city.minato.tokyo.jp/kuyakushokaikaku/naibutosei.html
Ⅱ.文京区
・代表社員は、文京区を幾度か訪れたことがある。文京区には東京大学(本郷キャンパス)、東京ドームシティ、湯島天神などがある。
§東京大学(本郷キャンパス):https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/about/campus-guide/index.html
§東京ドームシティ:https://www.tokyo-dome.co.jp/
§湯島天神:https://www.yushimatenjin.or.jp/pc/index.htm
・HPのトップ右上部は、スライドショーではないが、「文京花の五大まつり」、「プラスチック分別回収」、「文京区安心安全News」、「子ども宅食プロジェクト」が掲載されていた。
§文京区役所:https://www.city.bunkyo.lg.jp/
・令和5年度の内部統制評価報告書であるが、評価結果及び不備の是正に関する事項には以下の記載があった。
3 評価結果
上記評価手続のとおり、評価作業を実施した結果、運用上の重大な不備を把握したことから、区の財務に関する事務に係る内部統制は、評価対象期間において有効に運用されていないと判断いたしました。
4 不備の是正に関する事項
3の運用上の重大な不備については、子ども家庭部子育て支援課において、令和5年 10 月1日から使用する子ども医療証を、有効期間等の印字部分に不備がある状態で対象者 34,320 人に送付していたもので、受け取った区民からの指摘により判明いたしました。納品時に印字部分に不備がないか確認すべきところ、区及び事業者の双方において確認作業が不十分であったことによるもので、当該不備の判明後、正しい医療証を作成の上、10 月1日からの使用に間に合うよう再送付いたしました。
しかしながら、区民から寄せられた多数の問合せへの対応により通常業務に支障を来したとともに、再送付にかかる追加費用 3,511,085 円のうち、1,011,085 円を区が負担したことで、区に対する信用を大きく失墜させたものと考えております。
是正措置として、課内において契約制度への理解促進を図るとともに、適正な事務処理を徹底するため、仕様書の記載内容の確認や契約の履行管理、印刷物の校正作業については、担当者単独で行わず複数の職員でのチェック体制を敷くなどの業務改善を行いました。
さらに、このような不適切な事案が発生したことについては、全庁的に共有を図るとともに、同様な不備が発生することがないよう、組織的かつ効果的に内部統制に取り組むことで、一層適正な業務執行の確保に努めてまいります。
§文京区役所内部統制制度: https://www.city.bunkyo.lg.jp/b005/p006465.html
Ⅲ.台東区
・代表社員は、上野恩賜公園、美術館など台東区を幾度か訪れたことがある。文京区にはそのほかに浅草寺などがある。今年のNHK大河ドラマ「べらぼう ~蔦重栄華乃夢噺~」にゆかりの地がたくさんある。
§上野恩賜公園:https://www.kensetsu.metro.tokyo.lg.jp/jimusho/toubuk/ueno/
§国立西洋美術館: https://www.nmwa.go.jp/jp/index.html
§東京国立博物館:https://www.tnm.jp/
§浅草寺:https://www.senso-ji.jp/
§べらぼう 江戸たいとう 大河ドラマ館:https://taito-tsutaju.jp/features/exhibition
・HPのトップ右上部は、「自宅からできる!オンライン転出届」、「プラスチック分別回収が区内全域で始まりました」、「蔦重の夢が息づく粋なまち台東区」、「マイナンバーをお持ちの方へ 来庁不要で戸籍・住民票の写し等を受け取ることができます!」のスライドショーとなっていた。
§台東区役所:https://www.city.bunkyo.lg.jp/
・令和5年度の内部統制評価報告書であるが、評価結果及び不備の是正に関する事項には以下の記載があった。
3 評価結果
上記評価手続のとおり、ガイドラインに規定する評価作業を実施した結果、内部統制については、評価基準日における整備上の重大な不備は無く、また評価対象期間における運用上の重大な不備も無いため、有効に機能していると判断いたしました。
4 不備の是正に関する事項
別紙「令和5年度台東区内部統制評価報告書」中、
「1(3)事務に関する事故等の概要及び再発防止策」のとおり
1(3)事務に関する事故等の概要及び再発防止策
令和5年度に業務レベルの内部統制として取り組んだリスク192件のうち、報道発表した事務に関する事故等の概要と再発防止策は下記のとおりである。
項番 | 公表日 | 課名 | 事故等の概要 | 再発防止策 |
1 | 8月3日 | 保護課 | 生活保護事務を担当する職員 1 名が、生活保護費の支給認定に必要な手続きを怠り、不作為による保護費の一部未支給、不作為による保護費の過払い、保護費の立替払いの不適切な処理を行った。 | 下記の①~④を実施し、職員の事務処理内容及び事務の進捗に係る組織的な管理を徹底した。 ①課内研修の充実によるコンプライアンスの再徹底 ②ケースワーカーによる査察指導員への報告に係る統一的なルールの確立③複数の査察指導員が相互に進捗状況を共有し、チェックする体制の構築 ④職場内の情報共有が円滑に行える、職場環境の見直し |
2 | 8月3日 | 児童保育課 | 区立小学校で実施している放課後子供教室において、委託事業者による配置人員についての虚偽記載・報告があった。 | 区職員による巡回等の機会を増やし、運営状況に対するチェックを強化した。当該委託事業者に対しては、適正な人員配置を行うよう指導し、改善を確認した。 また、こどもクラブ・放課後子供教室を運営する他の事業者に対してヒアリングを実施し、虚偽の報告が無いことを確認した。 |
3 | 8月9日 | 企画課 | 区では、家計支援特別給付金の支給にあたり、「租税条約による免除の適用の届出によって市町村民税所得割が免除された者を含む世帯は、支給対象としない」こととしているが、システムによる支給対象世帯の抽出作業に誤りがあり、支給対象でない当該世帯に対しても誤って通知し、支給を行った。 | 支給対象世帯の抽出時に、システムベンダーが作成した対象者リストに先の該当者が含まれていないことを、複数職員によりダブルチェックする。さらに、支給決定時においても再度、複数職員によるダブルチェックを行い、支給対象者の確認を徹底した。 |
4 | 8月17日 | 戸籍住民サービス課 | 廃棄対象のマイナンバーカードや住民基本台帳カードについて、裁断処理が不十分なカードが混入したごみ 袋を搬出し、回収事業者からの連絡により、カード券面情報の漏えいが判明した。 |
一連のカード廃棄処理工程をマニュアル化し、複数職員で確認しながら実施することで、確実な廃棄を徹底した。加えて、シュレッダー機器の点検、入れ替えを実施した。 |
5 | 8月30日 | 戸籍住民サービス課 | 窓口で戸籍全部事項証明を2通請求した方に対し、本人の戸籍全部事項証明と別人の戸籍全部事項証明を交付した。 | 個人情報保護の意識向上、リスク発生時の迅速な対応など、課内の全職員を対象に危機管理研修を実施するとともに、担当業務の手順を再確認するよう徹底した。加えて、証明書交付時の確認項目を貼り出し、業務手順を確認しながら窓口受付を行うこととした。 |
6 | 8月31日 | 児童保育課 | 認可保育所及び認定こども園を利用している多子世帯については、保育料の負担軽減策を講じているが、多子世帯として考慮すべき世帯のうち、一部の世帯についてシステムへの多子世帯登録を行っておらず、保育料が減額されていなかった。 | 定期的に、住民基本台帳システムから異動者一覧を出力し、保育所を利用している世帯との全件照合を実施することとした。また、入力処理の際は複数職員によるダブルチェックを行い、内容確認を徹底した。 |
7 |
(令和6年)3月26日 |
障害福祉課 | 障害者総合支援法に基づく障害者相談支援事業について、消費税等が非課税となる社会福祉事業と誤認し、委託事業者に対し、消費税を支払っていなかった。 | 事業の根拠法令等を複数職員により確認し、内容を適切に把握するとともに、不明な点は必ず国や東京都へ確認を行うこととした。また、契約締結時においても根拠法令等の再確認を徹底し、各事業の税務上の取扱いについて、改めて正確に理解するとともに、誤認が発生していないか確認を行った。 |
§台東区役所内部統制: https://www.city.taito.lg.jp/kusei/kunokeikaku/naibu/index.html
Ⅳ.墨田区
・代表社員は、墨田区では、東京スカイツリーなどを訪れたことがある。墨田区にはそのほかに両国国技館などがある。
§東京スカイツリー:https://www.tokyo-skytree.jp/
§両国国技館: https://kokugikan.sumo.or.jp/
・HPのトップ上部は、「すみだ保健子育て総合センター 新保健施設等複合施設 保健・子育て・教育の関連施設(部署)が当施設に集約されて開館しました」という記事と写真が掲載されていた。
§墨田区役所:https://www.city.sumida.lg.jp/
・令和5年度の内部統制評価報告書であるが、評価結果及び不備の是正に関する事項には以下の記載があった。
3 評価結果
上記2の評価手続のとおり評価を実施したところ、次のとおりの評価結果となりました。
(1)全庁的な内部統制 評価項目ごとのそれぞれにおいて適切な取組がされていたことから、整備上及び運用上の 不備はなく、内部統制は有効であると評価しました。
(2)業務レベルの内部統制 財務に関する事務処理上の誤り及び個人情報漏洩事故の発生はあったものの、区や区民に 対し大きな経済的・社会的な不利益が生じるような内部統制の重大な不備に該当するものは なく、内部統制は有効であると評価しました。
4 不備の是正に関する事項
内部統制の重大な不備には該当しないものの、業務レベルの内部統制において発生した事務 処理上の誤りについては、評価基準日(令和 6 年3月31日)までに、適切な改善策を講じま した。
なお、重大な不備の判断については、以下の記載がある。
報告のあった運用上の不備については、現金出納簿等の記載誤りや補助金申請に係る内訳資料の確認漏れであり、区や区民に対し大きな経済的・社会的な不利益を生じさせるものではなかったため、運用上の重大な不備には該当しないものと判断した。
§墨田区役所内部統制: https://www.city.sumida.lg.jp/kuseijoho/naibukoueki/naibutousei/index.html
Ⅴ.杉並区
・代表社員は、杉並区には、ずいぶん昔の監査法人時代に仕事で訪れたことがある(と思われる)。杉並区には東京工芸大学 杉並アニメーションミュージアム、気象神社などがある。
§東京工芸大学 杉並アニメーションミュージアム:https://sam.or.jp/
§気象神社: https://www.koenji-hikawa.com/kisho_jinja/
・HPのトップ上部は、他の地方公共団体と異なり、生活場面ごとの生活便利ナビが並んでいる。区からのお知らせは、HPのトップ下部にある。
§杉並区役所:https://www.city.suginami.tokyo.jp/
・令和5年度の内部統制評価報告書であるが、評価結果及び不備の是正に関する事項には以下の記載があった。
3 評価結果
上記評価手続のとおり評価を実施したところ、業務レベルの内部統制において不適切な 財務事務の発生はあったものの、重大な不備に該当するものはなく、内部統制はおおむね 有効に整備及び運用されていると判断しました。
4 不備の是正に関する事項
重大な不備に該当するものはありませんでしたが、発生した不適切な財務事務について は、各部・課で速やかにリスク対応策を講じました。区民等に影響を与える事案の発生は、 区民等の信頼を大きく損ねる恐れもあることから、他課でも発生しうる事案については、 全課共通のリスクとして識別して、対策を講じてまいります。
なお、内部統制評価報告書附属資料には、重大な不備に該当はしないものの、たとえば、表2として、「財務に関する事務処理の誤りのうち、契約相手や支払先、区民等に対して影響を与えてしまった不適切事項とその再発防止策の一覧」が掲載されていた。
§杉並区役所内部統制評価報告書: https://www.city.suginami.tokyo.jp/s007/5844.html
以下、次号。