地方公共団体の内部統制評価報告書の公表状況調査【北海道編】
・今回は北海道を取り上げる。
・北海道には35市ある。
・各地方公共団体のHPによると内部統制評価報告書を公表している市は札幌市、旭川市と恵庭市がある。前回の調査から変動がない。
§指定都市:札幌市(人口約196万7千人。令和7年10月1日現在。以下同様。)
§中核市:旭川市(人口約31万人)
§その他の市:恵庭市(人口約7万人)
Ⅰ.札幌市
・令和6年度の内部統制評価報告書の評価結果は以下の通りとなっている。
上記評価手続のとおり、ガイドラインに規定する評価作業を実施した結果、次項のとおり評価対象期間中の運用上の重大な不備を把握したため、札幌市の財務に関する事務に係る内部統制は、評価対象期間において一部有効に運用されていないと判断いたしました。
・運用上の重大な不備の内容は、附属資料に記載されている。また、報道機関には、令和6年11月15日に発信されている。
| 【事案】国民健康保険に係る道交付金の一部返還 | |
| 概 要 |
北海道から札幌市に交付される北海道国民健康保険保険給付費等交付金普通交付金(※1)について、基本的な事務が徹底されておらず、申請書作成時や実績報告の際に誤った数値を参照し、平成 30 年度から令和2年度までに交付を受けた交付金が過大となっていた。 このため、合計 198,943,759 円(※2)について、北海道への返還が必要となった。 なお、当該年度以外に誤りがないことを確認済み。 ※1 札幌市が被保険者に直接給付する現金給付分(療養費、高額療養費、移動費、出産育児一時金、葬祭費等)について、北海道から札幌市へ交付されるもの。 ※2 各年度の内訳は、平成 30 年度 21,233,730 円、令和元年度 105,632,187 円、令和2年度 72,077,842 円。 |
| 原 因 |
(1) 手続の不備 交付金の変更申請や実績報告による精算を行う際、北海道への必要書類の提出について、決裁を行っていないものや、提出を終えた後に遡及して決裁を行っているものが見られた。 (2) 内容の不備 ア 計算ミス 交付金の変更申請や実績報告による精算を行う際、交付金に関する基礎数値の算定において、単純な計算ミスが複数見られた。 イ 制度の理解不足 (a) 一部負担金減免額の算定誤り 交付金の変更申請や実績報告による精算を行う際、減算要素となる一部負担金減免額の算定において、使用する数値の時点誤りが見られた。 (b) 返還金の算定誤り 交付金の変更申請や実績報告による精算を行う際、減算要素となる返還金(第三者行為求償、不正・不当利得返還)の算定において、平成 30 年度の制度改正(国民健康保険の都道府県化)により保険給付原資が変更となった(国 32%→道 100%)。これに伴い、平成 29 年度以前受診分は 32%、平成 30 年度以降受診分は 100%で報告すべきところ、受診年度に関わらず 32%で報告がされていた。 (c) 決算見込額の使用 実績報告による精算を行う際、本来決算額を使用すべきところで、決算見込額を使用して報告が行われていた。 事故の原因は以上のとおりであり、ダブルチェックなど、基本的な事務を徹底することにより、防ぐことが可能なものであった。 |
| 再 発 防 止 策 |
進捗管理のため、交付金に係る年間作業スケジュール表を作成したほか、各担当者の業務を年次、月次、日次、随時の業務に整理し、上司や他職員がチェックできる体制を構築した。これにより、作業に漏れや遅れがないか確認を行えるようにした。 また、申請内容における各数値の算定誤りを防止するため、交付金の申請や実績報告など各段階において、係員同士及び係長によるチェックを徹底することとした。 さらに、要綱の改正時には特に見落としや誤解が生じやすいため、組織的な確認を徹底するほか、些細であっても疑義がある場合は必ず北海道へ確認を行うこととした。 |
§札幌市内部統制制度:https://www.city.sapporo.jp/somu/compliance/naibutosei/naibutosei.html
Ⅱ.旭川市
・令和6年度の内部統制評価報告書の評価結果は、以下の通りであった。
⑴ 全庁的な内部統制の評価
2⑴に従い、別紙2のとおり評価を実施した結果、不備の発生はありませんでした。このため、旭川市における全庁的な内部統制は、評価基準日において有効に整備され、評価対象期間において有効に運用されていると判断しました。
⑵ 業務レベルの内部統制の評価
2⑵に従い、別紙3(記載省略)のとおり評価を実施しました。
なお、不備については、「制度設計上の不備」※1(記載省略)と「制度運用上の不備」※2(記載省略)の2分類とし、次のとおり分類しています。
ア 制度設計上の不備について
制度設計上の不備は、1件ありました。
これらの不備について、個々の対応状況を基に事案の重要性や影響度を勘案して検討した結果、制度設計上の重大な不備に該当する事案はありませんでした。
なお、不備については、各課において改善事項を定め、適切な運用に努めております。
イ 制度運用上の不備について
制度運用上の不備は、66件ありました。 これらの不備について、個々の対応状況を基に事案の重要性や影響度を勘案して検討した結果、制度運用上の重大な不備に該当する事案はありませんでした。
なお、不備については、各課において改善事項を定め、適切な運用に努めております。
ウ 業務レベルの内部統制に係る評価結果
ア及びイのとおり、評価対象期間中、制度設計上及び制度運用上の重大な不備はなく、有効に運用されていると判断しました。
附属資料に、内部統制の不備が分類されている。
(単位:件)
| 不備件数 | 制度設計上の不備 | 制度運用上の不備 | ||
| 重要リスク合計 | 57 | 0 | 57 | |
| 指定 | 個人情報の漏えい・紛失 | 10 | 1 | 9 |
| 合計 | 67 | 1 | 66 | |
(※)全部局において特に重点的に対応する必要があるリスク(筆者注)
また、主な不備内容(不備件数が多かった項目)として、掲げられている7項目は以下の通りであるが、いずれも制度運用上の不備である。制度設計上の不備1件の内容は記載がないため不明である。
| リスク No. |
リスク名 | 不備内容と是正状況 |
| 1 | 申請書等の未処 理、処理誤り、処理 遅れ (8件) |
・領収印の日付を誤って押印した事案があったことから、当日の事務を行う前や押印の際の確認を徹底することとした。 |
| ・届出者と同姓同名の別人の廃止処理を行った事案があったことから、氏名及び生年月日で検索した確認書類を出力するとともに、提出書類との照合、さらに本人への確認を行うことを徹底することとした。 | ||
| 2 | 過大徴収・過少徴 収 (7件) |
・行政財産の目的外使用許可に伴う加算料金について、適用すべき燃料費等調整単価等を誤ったことにより過大徴収となった事案があったことから、算定方法の共有及び複数の職員による確認を徹底することとした。 |
| ・システムの設定を誤り、過少の徴収となった事案があったことから、テストデータの入力し、複数人で反映状況を確認することとした。 | ||
| 3 | 過大支給・過少支 給 (4件) |
・会計年度任用職員の通勤に係る旅費について、勤務を要しない日が出勤簿上勤務したことになっており、過大支給していた事案があったことから、人数の多い会計年度任用職員の管理を担当者以外も理解を深め、システムなどで事務処理の簡易化を図ることとした。 |
| 7 | 業務の遅滞 (5件) |
・業務の履行が完了したにもかかわらず、速やかに契約保証金を返還していない事案あったことから、契約書の確認のほか、チェックリストの作成・確認を行うこととした。 |
| 11 | 送付時の相手先・ 内容の誤り (5件) |
・事業所に対し異なる対象者の文書を送付する事案があったことから、事業所と対象者を整理した一覧と突合を行いながら封かんを徹底することとした。 |
| 16 | 支出漏れや時期の 誤り (5件) |
・ 請 求 書 の 受 領 日 や 支 払 状 況 を 一 覧 化 し た チ ェ ッ ク 表 を 活 用 し て い た が 、チェック欄の記入誤りにより支払期限を過ぎた事案があったことから、チェック表を支出命令票と同時に回付し、複数人によるチェックを徹底するほか、定期的に支出状況を確認することとした。 |
| 17 | 調定事務の漏れ、 遅れ、誤り (7件) |
・支出に関するリストは作成していたが、収入に関するリストは作成しておらず、物品の貸付けに係る調定が漏れていた事案があったことから、収入に関するリストも作成し、複数人でチェックすることとした。 |
| ・料金の算定過程において、条例で定める係数を乗じていなかったことにより、誤りが生じた事案があったことから、マニュアルを見直すとともに、審査の際に専用の計算ツールを使用することなどの改善を行うこととした。 |
§旭川市内部統制制度について:https://www.city.asahikawa.hokkaido.jp/700/735/755/756/d074920.html
Ⅲ.恵庭市
・令和6年度の内部統制評価報告書の評価結果の記載は以下の通りである。
上記評価手続のとおり、ガイドラインに規定する評価作業を実施した限り、評価対象期間中の運用上の重大な不備を把握したため、恵庭市の財務及びその他事務に係る内部統制は評価対象期間において一部有効に運用されていないと判断いたしました。
・また、令和6年度は、運用上の重大な不備があるため、不備の是正に関する事項を記載している。
(1)受理できない届出書の受理決定
令和5年11月、母親の本籍地のみに提出可能な胎児認知届を誤って受理しました。その後、当該母親から出生届が提出され、本籍地自治体宛てに出生届を送付しましたが、その際、胎児認知届の保管を失念し未送付だったことから認知が反映されず、当該児は非嫡出子として戸籍に記載されました。
令和6年1月に保存していた胎児認知届を発見し、未送付が判明したことから届出人に経緯の説明と謝罪をするとともに、届出日に遡って行為を有効にする追完届に署名をいただいたことから、胎児認知届及び追完届を本籍地自治体宛てに送付しました。
本件を受け担当課では、判断に迷う事案については必ず他の職員や法務局に相談すること、研修会への参加などの学習機会を確保することで対応を図りました。
(2)生活保護費に係る不適切な事務処理
生活保護受給者から受領した収入申告書などの処理を行わなかったため、生活保護費を誤支給する事案が発生しました。未処理の期間は令和3年度から令和5年度までの3年間で、影響を与えた世帯数は15世帯で未処理件数は214件でした。誤支給の内訳は、過払い世帯数が9世帯で210万8,436円、未支給世帯数が11世帯で29万2,772円、合計240万1,208円です。(過払いと未支給、双方に該当する世帯あり)
これら15対象世帯に対して謝罪と説明を行い、全ての世帯に関する事務処理を完了しました。
本件を受け担当課では、ケースワーカーが受領した書類は査察指導員(主査)が確認し、毎月の進捗状況や未処理案件の月1回確認するなどの対応を図りました。
(3)補助金交付申請事務のミス
令和5年度子育て世帯生活支援特別給付金事業に係る国庫補助金の申請において、変更交付申請時に追加費用としてシステム改修費を計上しなかったため補助額が過少になりました。過少の額は182万1,000円です。
本件を受け担当課では、補助対象経費の内容について課内での情報共有を徹底するとともに、決裁における確認の徹底を図ることにしました。
(4)国保税の誤賦課
令和5年度の国民健康保険税において、外国人2名の誤賦課が発生しました。外国人においては、氏名表記が国保税と住民税で異なる場合があるため、生年月日等をもとに本人確認していますが、今回、データ抽出時の設定を誤ったことから所得割額が正しく算定されなかったことが原因です。この結果、課税額が本来より過少賦課となり、その合計額は74万6,100円となりました。そうしたことから当該2名の方に対し、誤課税について説明と謝罪をしたうえで、過少となった税額については遡及賦課する旨を伝え、了承をいただきました。なお、両名とも令和6年度中に完納されています。
本件を受け担当課では、外国人に対する課税処理にあたっては前年度の課税状況を確認することや、氏名の表記違いによる本人確認の方法について、マニュアルに記載するなどの対応を図りました。
(5)住民税の誤賦課
税務署から送付された確定申告データを入力業務委託事業者への引渡し用フォルダに保存しなかったことから入力漏れが生じ、誤賦課になった方が発生しました。入力漏れは36名であり、そのうち税額に変更が生じた方は17名でした。誤賦課の内訳は、増額の方は1名で影響額は500円、減額の方は16名で影響額は100円から38万100円、全体では82万2,400円となっています。影響を受けた方には、文書や電話で謝罪と税額変更の理由を説明し、ご理解をいただくとともに新たな納税通知書および納付書を送付いたしました。
本件を受け担当課では、税務LAN国税連携ツールの機能を活用し、入力漏れが生じない対応を強化するとともに、当該確認作業については定期的に複数の職員により実施する体制としました。
§恵庭市内部制度統制について:https://www.city.eniwa.hokkaido.jp/soshikikarasagasu/soumubu/shokuinka/naibutousei/10138.html
以下、次号。
